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経営者は朝令暮改?~人事が経営者に信頼されるための「3つのポイント」〜

経営者は朝令暮改?~人事が経営者に信頼されるための「3つのポイント」〜

高橋実

株式会社ティーブリッジェズカンパニー 代表取締役、組織⼈事クリエイティブディレクター/マイクロ⼈事部⻑、国家資格キャリアコンサルタント、法政⼤学兼任講師

高橋実

「今年の新卒採用人数を30人増やすので、しっかり人数確保するように」

「来期までに営業の優秀なマネージャー候補の採用してくれ」

「人事制度が古くなったので来期には制度を改定したい」

経営者から呼び出され、突然こんな人事課題の指示があって戸惑ってしまった経験のある人事の方は多いのではないでしょうか?ではなぜ、こんな「朝令暮改」のような指示が経営者からくるのでしょうか?

経営者は、常に会社のことを考えている

当たり前のことですが、経営者は常に「会社のこと」を考え続けています。人事のあなたや社員には届いてこない情報も持っています。経営者は、常に「経営視点」に立ち、仕事の時間だけでなくプライベートを削ってでも「どのようにいい会社にしていくべきなのか」と、常に考えを巡らせることに時間を割いています。経営者が会社のことを考える時間の量は、現場の人事が考える時間よりはるかに多いのです。

経営者からの突然の指示は、現場の人事からすると朝令暮改のように思えるかもしれません。しかしそれは、経営者が多くの時間を割いて、様々な経営視点から考え、決断をしている結果なのです。しかし、時間をかけて行ってきた経営者の思考プロセスを共有することはなかなか難しく、ギャップにつながりやすいのです。

経営者は、人事のシロウトであることを理解する

経営者の最も大事な仕事は「事業を成長させること」です。事業が成長し維持していかなければ、組織は成り立たないからです。そのため、ほとんどの経営者はまず事業視点に重きを置いています。

本来人事の仕事は、経営者がやるべき仕事。しかし、スタートアップ企業などでは事業成長のスピードと成果が必要です。そのため、どうしても事業寄りの仕事の時間が多くなり、人事の仕事は後回しになりがちです。経営者には人事の知識を体系的に学んでいる時間はありません。言ってみれば、経営者は「人事のシロウト」なのです。だから、人事の担当者に「経営の代弁者として」権限移譲をしたいと考えるのです。

人事担当者からすれば、時として経営者の思いつきを丸投げされているように感じるかもしれません。しかし、経営者は思考プロセスを話す時間も、実行に移す時間もないのです。人事知識が浅く、自分の考えることが正しいかに確信を持てないこともあるでしょう。だからこそ、人事の担当者には「人事プロフェッショナルとして、経営者の意思を咀嚼して自ら考え、遂行する力」が求められます。これが、経営の代弁者として人事担当者に必要な役割なのです。

組織では、事業成長に伴って「組織の成長痛」が起こる

 事業成長のプロセスでは、企業の規模はどんどん大きくなり、社員数も増えていきます。組織の状態もどんどん変わっていくでしょう。その時々でタイムリーな打ち手を実行していかねばなりません。

 成長する組織には、必ず「組織の成長痛」とも言える出来事が起こります。ポジティブな出来事であればいいのですが、退職者やメンタル不調社員が増えたり、社内コミュニケーションの不和が起こったりネガティブな出来事も多く起こるようになります。このような出来事を放っておいてしまうと、さらに大きな問題に発展してしまうこともあるのです。

 問題が発展するとさらに解決まで大きな手間がかかり、事業成長の足を引っ張りかねません。人事担当者は、このような「組織の成長痛」をいち早く察知し、タイムリーに解決策を実行していくことが求められるのです。

組織づくりに必要な3つの輪

 しかし、問題の解決策も、思うように進められない企業はとても多いのです。多くの企業は、「対処療法」に終始してしまうという傾向があります。

 例えば、退職者が増えてしまい、慌てて補充の中途採用を行うけれど、「欠員ポジションの業務内容」に特化して採用要件を組み立ててしまい、ビジョンや企業文化のマッチング度が低い社員を入社させてしまったりする。すると、社員が定着せず、さらに退職者の増加につながってしまい、企業文化も崩れて社員の定着率も上がらず、人事担当者はますます短期的な採用業務に忙殺される。本質的な課題に目がいかず、対処療法を続けることによって「負のループ」に陥ってしまうような企業はとても多いです。

 組織づくりや組織変革においては、「3つの」の視点が必要です。それは「経営戦略」「マーケティング戦略」「人事戦略」です。この3つの視点を押さえた上で、対処療法ではなく組織づくりのグランドデザインを描くことが必要なのです。

 前述したように、多くの会社の経営者は「人事のシロウト」です。どうしても「人事戦略」は置いていかれ、組織づくりの3つの輪のピースが揃わずうまくいかないことが多くなるのです。

 組織づくりの「人事戦略」というピースをはめるのが、人事担当者の役割なのです。そして、3つの輪がそれぞれ機能するためには、人事担当者は、併せて「経営戦略」「マーケティング戦略」もしっかり理解し、経営者と対峙していくべきなのです。

人事が経営者から信頼を得るための「3つのポイント」

 非常に重要な役割を担っている人事担当者の仕事ですが、円滑な組織づくりを進めていくためには、経営者からの信頼を深めていくことが重要になります。

そのために必要な3つのポイントは、以下の通りです。

① 経営者が「困っていること」に優先的に取り組んでみよう
最も重要なポイントは「経営者が困っていることに優先的に取り組むこと」です。経営者も人間です。困っていることを助けてくれる社員への信頼は強くなります。人事担当者は、経営者に「一番困っていることは何ですか?」という質問を投げかけて、最優先で取り組むようにしてください。おのずから信頼は深まっていくはずです。
② ダメだしを怖れず、とにかく多くのアイデアをぶつけてみよう
経営者を納得させる素晴らしいアイデアを時間をかけて考えるのもいいのですが、むしろそれよりも「多くのアイデアをぶつけてみる」ことが経営者の信頼を得る近道です。はじめは、経営者からダメ出しをされることも多いと思いますが、それを怖れずに小さなことからスピード感をもって多くのアイデアをぶつけてみましょう。
③ 経営者の期待値を『1mm』上回る工夫をしよう
経営者の「期待値」をしっかりと把握し、それを「1mm上回る」ことを心がけてください。一つの大きな成果よりも、期待値を少しだけ上回る成果を数多くあげる方が、経営者からの信頼感は高まるものなのです。人事担当者自身も、経営からの期待値を意識することで自然と経営視点が理解できるようになるはずです。

組織づくりは、経営者と人事担当者が、強固な信頼関係を持ってタッグを組み取り組んでいくことで、大きな成果につながります。人事担当者は、経営者を理解し、経営者の視点に立って取り組むことで、組織も、そして自分自身も大きく成長することができるはずです。

今日のポイント

・経営者は「人事シロウト」。人事領域は人事担当者がプロフェッショナリティを発揮しよう
・組織づくりに必要な3つの輪は「事業戦略」「マーケティング戦略」そして「人事戦略」が欠かせない
・人事担当者は、常に経営者と強固な信頼関係を作ることが大事

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この記事を書いた人

高橋実

株式会社ティーブリッジェズカンパニー 代表取締役、組織⼈事クリエイティブディレクター/マイクロ⼈事部⻑、国家資格キャリアコンサルタント、法政⼤学兼任講師

高橋実

(株式会社ティーブリッジェズカンパニー 代表取締役、組織⼈事クリエイティブディレクター/マイクロ⼈事部⻑、国家資格キャリアコンサルタント、法政⼤学兼任講師)1991 年、株式会社ジェーシービーに新卒⼊社し、新規事業企画を中⼼に従事。⾦融業界で経験を積み、1998年NTTファイナンス株式会社、2001年にトヨタファイナンス株式会社にて新しくクレジットカード事業⽴ち上げに携わる。2008年に、トヨタファイナンス株式会社東京本社の総務⼈事マネージャーに着任。⼈事としてのキャリアをスタートさせる。2013年から株式会社HDE(現HENNGE株式会社)⼈事部⻑に着任。2018年より複数企業の⼈事責任者やアドバイザリーを兼務する「マイクロ⼈事部⻑」として⼈事の複業に取り組んでいる。

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