はじめに~HR Techとは~
最近はDXという言葉ととともに、人事労務の領域では、HR Tech(HRテック)という用語を耳にすることが多くなり、その活用の検討は避けて通れないものとなっております。
今回は、こうしたHR Techに関する現状やその概要、そして活用方法などについてお知らせしていきたいと思います。
HR Techとは、「“HR(Human Resource)× Technology”を意味する造語。クラウドやビッグデータ解析、人工知能(AI)など最先端のIT関連技術を使って、採用・育成・評価・配置などの人事関連業務を行う手法のこと」(「日本の人事部」ホームページより)とされております。主にクラウドシステムとして提供されている各種サービスを活用することが多いのですが、その領域は多岐にわたり、勤怠管理、社保手続、給与計算・年末調整、人事管理、人事評価、タレントマネジメント、リーダー育成、採用管理など様々なシステムが展開されています。
人事労務管理におけるサービスの全体像と導入時のポイント
HR Techにおけるクラウドシステムとして、主に「実務(勤怠・社保手続・給与)」と「人事管理・評価・タレントマネジメント」の領域でのサービスの全体像をまとめたものがこちらです。
(あくまで筆者がが社労士事務所として活用しているものやデモなどを体験したものの範囲内で記載しており、すべてのシステムやサービスを網羅したものではないことをご了承ください)
それぞれのシステムの紹介を見ると、人事労務の領域における効率化推進に役立てられそうですが、これらシステムを導入するときに留意するべき点はどのようなところにあるのでしょうか。
筆者は主に次のようなところにあると思っています。
① スポット的に導入するか、全体的に導入するか
現状においても、いわゆるオンプレ型のシステムなどを中心としてすでに既存のシステムを導入している企業もあるのではないでしょうか。そのような場合には、既存のシステムを生かしながら、連携の機能を生かしてその補助的なシステムとして活用していくのか、あるいは既存のシステムからの切り替えを含めた抜本的な導入を図るのかを検討していく必要があります。
② 経理・会計その他システムとの連動
システム導入が進められているのは人事労務の領域だけではありません。特にHR Techの前にはFinTech(フィンテック)という用語が多用されていたように、自社の経理・会計においてすでにシステム化、クラウド化が進んでいる可能性があります。こうした他の領域との連携や連動も意識しながら導入を進めて行く必要があります。
③ 会社の規模感/ステージに見合ったシステム選定を
それぞれのシステムや機能は、それに適している会社の規模やステージなどがあります。従業員の人数規模に適した操作感や画面になっているかどうか、会社ステージにあった帳票の出力機能、集計機能などが備わっているかどうかという点は、担当者の目線では非常に重要なところですし、この点を見誤ると、逆に生産性や効率の低下を招く結果になりかねません。
機能ごとの検討ポイント
勤怠管理
勤怠管理については、テレワーク・リモートワークの浸透により、打刻場所を問わないクラウド勤怠が主流になってきています。また、従来から機能としてありましたが、打刻場所をGPSとの連携により特定できる機能もあり、会社の管理方針により活用できます。
最近の流れとしては、労働基準法等において労働時間管理の規制が強まっており、打刻された時刻と記録される労働時間との違い(かい離)をしっかり管理していくこと、36協定の上限時間との管理を行っていくことなどが求められています。特に今後重要となって くるのは、PCのログや入退室記録などの打刻や労働時間との違いの部分です。こうした管理を効率的に行えるシステムも出てきているので検討されてはいかがでしょうか。
給与計算
給与計算の結果や正確性については各システムで計算結果そのものに違いが出てくるものでははいはずです。あとは、設定時の入力のしやすさや間違いのない入力方法などが担当者目線では気になるところです。また、業務時間の削減に大幅に寄与するWEB明細の整備は当然実施する前提で検討した方がよいと思います。
また、会社の成長やステージににあわせて出力帳票のバリエーションや項目ごとのカスタム計算式の設定などが求められることもあり、こうした細かい目線で検討をしていく必要がありそうです。
なお、システムによっては、労働基準法上求められる賃金台帳の記載項目が表示されなかったり、表示するように改修しようとすると追加料金がかかったりすることもあるため、必要な記載項目が網羅されているか確認しておく必要があります。
社会保険手続
大企業においては、すでに社会保険手続における電子申請が義務化されています(2020年4月)。今後は中小企業においても、社会保険手続の電子申請対応は不可避といえます。
システム化するにあたって検討事項となるGビズIDとe-Govの違いについて概要を次の通りまとめましたので参考にされてください。
最後に
繰り返しになりますが、人事労務領域におけるシステム導入時のポイントを改めて確認したいと思います。各社における導入時の検討にお役立ていただくとともに、もしご不明点やお悩みなどあれば、お気軽にFECCまでご相談ください。
- 現状のシステムとの連携を含めてスポット的に導入するか、全体的に導入するかを検討
- 経理・会計その他システムとの連動も意識する
- 会社の規模感・ステージに見合ったシステム選定も重要!
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